2010-02-07
2009年新語・変語(オーストリア)
話題/新語・変語 |
昨年に引き続き、ドイツ語圏各国の新語・変語を抜粋してご紹介します。ことしもドイツからと思ったのですが、変語の作業がまだ終わらないので、オーストリアから始めます。
◆オーストリア◆
【新語】
1.Audimaxismus 大講堂主義
10月、大学の無償化や学習環境の改善を訴える学生たちがウィーン大学の大講堂(Auditorium Maximum。略称:Audi Max)を占拠。他大学の学生もこれに呼応し、さらには国境を越えてドイツにもこの動きは広まった。1968年の学生紛争もかくやと思わせる騒動に発展したが、2カ月後の12月22日、警官隊が大講堂に突入して強制排除となった。
この事態に対し、「政治よ、学生の声に耳を傾けてくれ」という願いがaudi(ラテン語「聞け」)に込められているようだと新語選者は述べている。さらに、MaxismusがMarximus(マルクス主義)に似ているのが興味深いとも。
2.Kuschelkurs ソフト路線
オーストリアで重視されるのは調和と協調。政治の世界においても同じこと。第二次世界大戦後、同国の政権は主に中道左派の社会民主党と中道右派の国民党が連立して担ってきた。2000年以降、連立の組み合わせが国民党と極右の自由党に変わったりしたこともあったが、2006年には社民党と国民党の大連立政権が復活。その後、年金や税制改革などにおける方針の違いから2008年7月に連立は解消され、9月に選挙が行われたが、1カ月半にわたるすったもんだの政策協議を経て、両党は再び連立政権を発足させ、柔軟で穏やかな政策運営に腐心している。
3.Ungustlvermutung 推定むかつく
報道法第7条bにより、犯罪容疑者は有罪が確定するまでは無罪として扱われなければならない。しかし、2000年から進められた国有住宅の民間企業への払い下げに伴う不透明な金銭の動きを見ると、渦中の元財務大臣カール・ハインツ・グラッサーに対し、Unschuldsvermutung(推定無罪)ならぬUngustlvermutung(推定むかつく)と言いたくなるのも無理はなさそう。
【変語】
1.Analogkäse なんちゃってチーズ
植物性の油やたんぱく質、それに香料、着色料などで安価に製造されるなんちゃってチーズ。ベルラコヴィッチ農林・環境・水利大臣は、プレッセ紙のインタビュー(6月17日)で、「本物のチーズではないことをはっきり表示させるべきだ。水油乳濁液と呼べばいい」と述べた。
2.Exiljude 追放ユダヤ人
9月のフォアアールベルク州議会選挙に向けて自由党が打ち出した「子供手当を我らの家庭に」に対し、同州ホーエンエムス市ユダヤ博物館長ハンノ・レヴィは「我らの」の厳密な定義を問う公開質問状を出すなど、批判的な態度を表明。その彼を自由党の州代表ディーター・エッガーが「アメリカからの追放ユダヤ人」と呼ぶと、それは人種差別であると非難する声が上がり、国を挙げての論争になった。そして迎えた選挙において、自由党は議席を5から9へと倍増させた。しかし、第1党である国民党は、35年に及ぶ同党との連立を解消した。
なお、生まれも育ちもドイツのハンノ・レヴィが「アメリカからの」と言われた理由ははっきりわからないが、この言葉がユダヤの金とメディアの力が選挙戦で物を言うことを示すコードと認識されているからという説がある。
3.Herkunftskriminalität 犯罪国家由来の犯罪
8月23日の国民議会(下院)において、マリア・テレジア・フェクター内務大臣は急増する外国人犯罪について言及した。これに対し、緑の党の議員が「先ほど内相は特定の国々の名を挙げて『Herkunftstäter(Herkunft〈出身〉、Täter〈犯人〉)』と発言したが、それら国々の出身者はみんな犯罪者であるとでも言うつもりか」と非難し、マスコミでも大きく取り上げられた。しかし、内相は、自分は「Herkunftstäter」などとは言っていない、それら犯人の出身国(Herkunftsländer)と発言したはずだと10月1日付シュタンダルト紙のインタビューに答えている。
ちなみに、会議録を見る限り、確かに内相は「(それら犯人の)出身国の当局との連携が不可欠である」と発言しているだけで、Herkunftstäterという言葉を使ったのは内相を非難したペーター・ピルツ議員の方である。シュタンダルト紙のインタビュアーは、「いや、あなたがそう言った」と内相に食い下がっていたけれども。
【ことしの一言】
"Reiche Eltern für alle!" 「みんなに金持ちの両親を!」
新語1位で紹介したように、今、オーストリア周辺の学生は大学の教育環境改善を求めていろいろな運動をしている。そのスローガンにも使われているこの一言は、親の社会的地位などが子供の教育を左右することをあらわす。
【ことしのろくでもない一言】
"Wer alt genug ist zum Stehlen, ist auch alt genug zum Sterben" 「盗みができるほど育っているなら、死ぬにも十分育っている」
8月5日、14歳と17歳の少年が無人のスーパーマーケットに入り込んだ。警報で駆けつけた警官が暗がりの中で発した銃弾が当たって2人は重傷を負い、14歳男子はその後病院で死亡した。発砲した警察官は精神的ダメージを受け、世間では警察批判が起こった。しかし、保守系大衆紙クローネンは、8月7日付で"Wer alt genug zum Einbrechen ist, ist auch alt genug zum Sterben(盗みに押し入ることができるほど育っているなら、死ぬにも十分育っている」)」というコラムニストのコメントを掲載した。さらに、同紙に寄せられた読者の声もこれと同じようなものだったという。