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独日文芸翻訳クラブ通信 RSSフィード

2006-12-18

『ほしのこどもたち』

| 13:33

[書名] ほしのこどもたち

[原題] Sternschnuppen

[著者名] イーダ・ボハッタ(Ida Bohatta)

[訳者名] 松居 スーザン、永嶋 恵子

[ページ数] 20ページ

[発行年月日] 2006.06.15

[出版社] 童心社

[ISBN] 4-494-00989-X

[価格] 735円(税込)

[分類] 児童書

 

 


 やわらかな色調の水彩で描かれた、星の子たち。雲のゆりかごで眠り、夜になると目を覚まして、お月さまや流れ星たちとお話しする。そんな星の子たちの暮らしを、優しさとユーモアにあふれた詩と絵で描いた、愛らしい絵本が邦訳された。

 ひとりひとりの星の子は、特別大きいわけでも明るいわけでもないが、自分の光で夜空を照らすことができるのを、とても幸せだと感じている。お月さまは自分の光を持たないけれど、星の子たちに愛されている。せっかちな彗星くん、無鉄砲な流れ星くんもいて、それぞれの星たちがそれぞれの個性を発揮して輝いている。星の子たちと同じように、どんな子供も、そして大人も、それぞれ人と違った個性を持ちながら自分だけの光り方をしているはず。そんなメッセージがさりげなくこめられている。


 イーダ・ボハッタ(1900~1992)はウィーンで活躍したイラストレーター、絵本作家。19歳でデビューして以来、その70冊を超える絵本はドイツ語圏の国々だけでなく世界各国で愛され、ポストカードやカードゲームなどにもなっている。日本では本書とともに、『はなのこどもたち』『かわいいひかりのこたち』『雨だれぽとり』が邦訳された。いずれも手のひらに収まるほどの小さな本で、祖父江慎の手がけた美しい装丁が印象深い。クリスマスプレゼントにも適したシリーズになっている。


 

(みじこ)

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2005-12-19

"Es ist ein Elch entsprungen"

| 18:09

[書名] Es ist ein Elch entsprungen

[著者名] Andreas Steinhoefel

[ページ数] 66ページ

[発行年月日] 2004.11

[出版社] Carlsen Verlag

[ISBN] 3-551-35379-4

[価格] 678円 (税込)

[分類] 児童書

[邦訳] ヘラジカがふってきた!

     (アンドレアス・シュタインヘーフェル著/鈴木仁子訳/早川書房)

★書評は、原書からのものです。

 

 


 もうすぐクリスマス。ベルティルは、ママとおねえちゃんと一緒に、居間でだんらんの時を過ごしている最中だった。と突然、バリバリ!と天井の裂ける音。1頭のヘラジカが、屋根を突き破って、テーブルの上にドスン!と落っこちてきた。クリスマスのためにそりを試行中、カーブで運転を誤り、空から地上に転落してしまったのだ。転落のときにけがをしたヘラジカは、治るまでベルティルの家でやっかいになる。そして、ベルティルたちと次第に打ち解けるうちに、身の上話を始める。サンタクロースのもとで働くヘラジカの使命は、トナカイが本番に走るルートに沿って、事前にテスト運転をすることだ。けれど世間はそんなこととは知らず、口にするのはトナカイのことばかり。一方転落に気づいたサンタクロースが、ヘラジカを連れ戻そうとベルティルの家までやってくるが、そこでお酒を飲みすぎ、町に出て行ったあげくに挙動不審で捕まってしまう。明日はもうクリスマスイブ。サンタクロースを一刻も早く救い出そうとするヘラジカたち。でないと世界中の子どもたちにプレゼントを配れない……。

 酔っ払ってはめをはずすサンタクロース、5か国語を話す心やさしいヘラジカ、パパがいなくてさびしい思いをしている主人公の男の子ベルティル、物知りでちょっといばりん坊のおねえちゃんなど、登場人物は個性的で魅力がある。ヘラジカをめぐって次々に騒動が起きるストーリーは、コメディタッチに描かれ、ゆかいなファンタジーとして楽しめるだろう。ベルティルとヘラジカが、次第に心を通わせてゆく場面が印象的だ。クリスマスプレゼントに、本当は何がほしいか、お互いの願いをそっと打ち明ける。ベルティルの願いはひとつ。パパが家に戻ってきてみんなで暮らすこと。ヘラジカは、一度でいいからクリスマスにそりを引くことが夢だ。はたして、2人の願いは本当にかなうのだろうか。1995年に最初に発表された作品は、今年映画化され、クリスマスシーズンの現在、ドイツなどで公開中である。

 アンドレアス・シュタインヘーフェル(1962-)はドイツ、バッテンベルク生まれ。児童書作家としてのみならず、脚本家、翻訳家としても活躍し、新聞に子どもの本の評論を発表するなど、文筆活動は多岐にわたる。"Defender: Geschichten aus der Mitte der Welt "で2002年度ドイツ児童文学賞ヤングアダルト部門でノミネートされるなど、多くの賞を受賞している。邦訳は他に『どこ行っちゃったの?』がある。ベルリン在住。

 

 

(くまこ)

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2005-11-28

『クララをいれてみんなで6人』

| 18:14

[書名] クララをいれてみんなで6人

[原題] Mit Clara sind wir sechs

[著者名] ペーター・ヘルトリング(Peter Haertling)

[訳者名] 佐々木田鶴子

[ページ数] 286ページ

[発行年月日] 1995.02

[出版社] 偕成社

[ISBN] 4-03-726550-8

[価格] 1400円 (税抜)

[分類] 児童書

 

 


 ショイラー一家はお父さんのシュテファン、お母さんのレーネ、フィリップと妹のテレーゼ、弟のパウルの5人家族。個性的な面々が毎日楽しく賑やかに「大きな靴箱のような」おんぼろの家で暮している。ある日、お母さんから特別ニュースの発表があった。赤ちゃんができたのだ。みんなは大喜びで、フィリップは赤ちゃんの部屋を作るためにパウルと1つの部屋を分け合うのも我慢する。でも、お父さんとお母さんは何だかけんかが増えたみたい。新聞記者のお父さんは自分の仕事に夢中で、家族のことをお母さんにだけ押し付けて飛び回っている。お母さんだって本当は働きたい。でも、家族のために我慢しているんだし、今はお腹に赤ちゃんがいるんだから、お父さんにちゃんとそばにいてほしいのだ。ある日お母さんが病気にかかっていて、赤ちゃんに影響があるかもしれないとわかる。みんなは不安と期待にどきどきしながら、赤ちゃんが生まれるのを待つ。

 どこにもありそうなごく普通の家族が、ぶつかりあったりお互いを思いやったりしながら暮す日常を、ユーモラスに描いた作品。子どもたちがけんかをしたりいたわりあったり、両親の言い争いに心を痛めたりする様子がほほえましく、いじらしい。また、両親は子どもたちの個性を尊重し信頼するよき父親、母親だが、かんしゃくを爆発させたり、愚痴を言ったりけんかもしたりする現実味のある夫婦として描かれている。周りを取り囲む友人たちや親類も、欠点もくせもある。すべての登場人物が等身大にあたたかく描かれているのがこの作品の魅力だろう。生まれてくる赤ちゃんをめぐって、傷付いたり悩んだり幸せな気持ちになったりしながら、家族が絆を強めて行く様子がごく自然に描かれている。

 著者ペーター・ヘルトリング(1933年から)はケムニッツ郊外で生まれた。戦後に両親を次々に失う。新聞社、出版社に勤務しながら詩や小説を発表し、1970年頃からは児童書を執筆。日本でも『ヒルベルという子がいた』『おばあちゃん』『ヨーンじいちゃん』『ひとりだけのコンサート』など、さまざまな作品が紹介されている。本書はヘルトリング自身の体験によるもので、家族に対する愛情と妻への感謝があらわれた作品である。

  

 

(Dotta)

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2005-07-09

『ママは行ってしまった』

| 18:20

[書名] ママは行ってしまった

[原題] Mama ist gegangen

[著者名] クリストフ・ハイン(Christoph Hein)

[訳者名] 松沢 あさか

[ページ数] 175ページ

[発行年月日] 2004.03

[出版社] さ・え・ら書房

[ISBN] 4-378-00785-1

[価格] 1300円(税別)

[分類] 児童書

 

 


 10歳の女の子ウラは、ママのことが大好き。ママは映画のディレクターで、いつも笑顔を絶やさず、撮影のたびにいろいろな人と友達になってしまう。そのほがらかなママを中心に、彫刻家のパパ、個性的なお兄さん2人とウラは、一家5人で仲良く暮らしていた。家族5人の誰が欠けても絶対にいや、そうウラは思っていたのに、ある冬の日、ママが急病で「行って」しまう。残された4人で助け合い、かけがえのない人を失った悲しみから立ち直っていく姿を描いた作品。

 4人の心が回復していくようすは、静かに、しかし決して感傷におぼれず、ときにはユーモアも交えて描かれている。芸術家肌でちょっぴり世事に疎いパパ、マイペースをくずさずいつも冷静な長男カレル、ユニークな言動で一家のムードメーカーになっている次男パウル、そして甘えん坊だけれど懸命に家族を守ろうとするウラ、この4人の個性が生き生きと伝わってくる。そして一家の再出発を象徴するのが、パパの手がけたピエタ(キリストのなきがらを抱くマリア像)だ。ママへの思いがこめられたピエタは大聖堂の前にすえられ、像を見る人すべてに、愛するものを失う悲しみとそれを乗り越えた先の希望を伝え続けることだろう。対象年齢は小学中学年から。

 クリストフ・ハイン(1944~)はシレジア地方ハインツェンドルフ(現ポーランド領)の牧師の家に生まれる。終戦後は東ドイツで育つが、父が牧師ということで東ドイツの政治体制のなかでは不利な立場にあり、学校に通うにも不便を強いられた。1970年代は劇作家として活躍し、1980年代には作家として、東ドイツだけでなく西ドイツでも実力を認められた。数々の文学賞を受賞し、東西のドイツ・ペンクラブが統合した1998年には、初代会長に選ばれた。代表作は『龍の血を浴びて』(1978)。英語圏でも注目され、"Willenbrock"(2000)の英訳は2005年IMPAC ダブリン文学賞最終候補に残ったが、惜しくも受賞を逃した。

 

(みじこ)

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2005-05-14

『魔法の声』

| 18:23

[書名] 魔法の声

[原題] Tintenherz

[著者名] コルネーリア・フンケ(Cornelia Funke)

[訳者名] 浅見昇吾

[ページ数] 637ページ

[発行年月日] 2003.11.30

[出版社] WAVE出版

[ISBN] 4-87290-171-1

[価格] 1900円(税別)

[分類] 児童書

  

 


 12歳のメギーは、古い家に父親のモーと2人で暮らしている。モーの仕事は古い本を修繕することで、2人とも無類の本好きだ。ある雨の夜、顔に大きな傷跡のある謎の人物がモーを訪ねてくる。ホコリ指と名乗るその男は、『闇の心』という本を探しているという。

 モーには不思議な魔法の力があった。物語を声に出して読むと、登場人物が本から抜け出てくるのだ。9年前、モー自身がその魔力に気づかずに『闇の心』を読んだところ、悪者が物語から飛び出してしまい、それと入れ替わりに、メギーの母親が本の世界へと消えていった。それ以来、モーは物語を声に出して読むのをやめていた。そんなことは何も知らないメギーだったが、ホコリ指の出現がきっかけで、モーの魔力を知ってしまう。そしてメギーたちは、『闇の心』を探しに本の収集家である叔母を訪ねるが、3人とも本の中から飛び出してしまった悪者に連れ去られ、悪と立ち向かうことになる。はたして、物語の中にのみ込まれ消えてしまった母親を助け出すことはできるのだろうか。

 文字の持つ力、語られる物語の力、本の持つ力がテーマになっている。物語を読むと、本の中の登場人物が飛び出して現れ、その代わりに現世界の人物が物語の中に入ってしまうという大胆な発想と描写はスリリングで、最後まで読者を飽きさせない。また『宝島』『トム・ソーヤの冒険』『アラビアン・ナイト』『指輪物語』など、古今東西の名作が各章の初めに一部引用されていて、本好きな読者にとってはたまらない魅力となっている。

 ドイツの作家コルネーリア・フンケによるこの作品は、2003年秋に、ドイツ、イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダ、日本などで同時発売された話題作である。ドイツ国内はもとより世界中で大きな反響を呼び、現在でも「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラー・リスト(児童書ハードカバー部門・5月15日付)で10位、ドイツの「フォーカス」ベストセラー・リスト(文芸一般部門・5月18日付)で18位にランクされ、しかも「フォーカス」の方では、リスト入りしてからすでに78週目を迎えるなど、前評判を裏切らない好調な売上げを記録している。


 本書は、2004年度ドイツ児童文学賞の児童書部門と青少年審査員賞でノミネートされたほか、同年度ウィーン青少年読者審査委員賞、2005年度カールバッハ・ガラガラヘビ賞など、数多くの児童文学賞を受賞しているが、読者層は子どもから大人までと幅広い。また作品の映画化も予定され、フンケ・ファンにとっては待ち遠しい続編”Tintenblut”(原題)が、2005年9月に刊行の予定である。なお日本では、フンケの邦訳として『どろぼうの神さま』『竜の騎士』などが出版されている。


 

(くまこ)

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