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独日文芸翻訳クラブ通信 RSSフィード

2004-11-20

『DeLi [デリ] Nr.3』

| 03:11

[書名] DeLi [デリ] Nr.3

[原題] -

[編集者名] 池田信雄、初見基、マイケ・マルクス、金山隆

[訳者名] -

[発行年月日] 2004.11.1

[出版社] 沖積舎

[ISBN] 4-8060-8480-8

[価格] 2000円(税別)

[分類] 文芸雑誌


 


 ドイツ語圏文芸を紹介する、日本で唯一の雑誌。春秋に一冊ずつの季刊で、2003年5月の創刊準備号(Nr.0)以来、最新号のNr.3まで4号が出ている。雑誌のホームページはこちら

 主な内容は、ドイツ語圏で発表された小説・詩・戯曲・エッセイなどの文芸作品である(これまでのところ書き下ろしはない)。特集に関連して、日本人作家の作品が掲載されることもある。たとえば、第1号のノヴァーリス特集では奥泉光や平出隆がエッセイを寄せており、第2号では平出隆とドゥルス・グリューンバインの対談に合わせて、両氏の詩が掲載された。対談・鼎談や朗読会などイベントの報告も多く、映画評・劇評・書評も読み応えがある。


 これまでに特集された作家は、ノヴァーリスの名を見てもわかるように、必ずしも現代の作家ではない。それどころか、4号中3号の特集が故人をとりあげている。雑誌のモットーは「ドイツ語圏文芸の新しい潮流」だが、目の前の新しい潮流だけではなく、現代の潮流につづく流れを作ってきた作家たちにも目を向けた編集となっている(詳細は記事末尾の【別表】へ)。かなりの質的ボリュームがある一方で、「もっとエンターテインメントを」との声も聞く。


 第3号の特集は、オーストリアの作家トーマス・ベルンハルト(1931-1989)。巻頭の短編『雨合羽』が、読者をぐいぐいと物語世界に引き込む。まるで戯曲を見ているようなスピード感だ。そのあとに掲載されている戯曲『リッター、デーネ、フォス』の方は、句読点がほとんど使われておらず、あたかも詩のような印象を与える。今年邦訳の刊行された長編『消去』(、池田信雄訳)について寄せられた、英米文学の柴田元幸の書評も興味深い。特集以外での掲載作家は、これもオーストリアの詩人クリスティーネ・ラヴァント(1915-1973)、トルコ国籍の作家ザフェル・シェノジャク(1961-)、スイスの若手作家ツォーエ・イェニー(1974-)などで、特に「ドイツ語圏文芸」が網羅された形になった。そのほか、第1号でもとりあげられたW.G.ゼーバルト(1944-2001)の短編も読める。


 4人の編集メンバー、池田信雄(編集長、東京大学教授)、初見基(都立大学助教授)、マイケ・マルクス(リテラリー・エージェント)、金山隆(フリー編集者)は、それぞれに本業を持ちながら編集に携わる。そのため刊行が遅れがちだが、充実した内容は読者を裏切らないものなので、刊行時期が軌道に乗ることを期待したい。


 

(04/11/20 鮎)
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【別表】 [これまでの特集、掲載作家]

[Nr.0] (創刊準備号のため、特集はなし) ドゥルス・グリューンバイン/ウラジミール・カミナー/トーマス・グラヴィニチ/マルセル・バイアー/アルベルト・オースターマイアー/梁石日/野崎歓 他

[Nr.1] 総力特集 ノヴァーリス/W.G.ゼーバルト/ヴェルナー・シュヴァ―プ/ブルクハルト・シュピネン/カトリン・レグラ/奥泉光/平出隆/今泉文子/丸山匠 他

[Nr.2] 特集 ベルリンの扉を開く -詩と対話 ベルリンのいま-/ドゥルス・グリューンバイン×平出隆(対談、朗読会)/ウラジミール・カミナー/ニーナ・イェクレ/ルネ・ポレシュ/トーマス・クリング/ヨーン・フォン・デュッフェル/多和田葉子 他

[Nr.3] 特集 トーマス・ベルンハルト/クリスティーネ・ラヴァント/ザフェル・シェノジャク/W.G.ゼーバルト/ツォーエ・イェニー/柴田元幸/寺尾格 他